七瀬編3


「まずはどうしようか...ずっとここにいても日芽香の条件クリアできないし」
「ごめん...私がいなければ2人がクリアできるのは分かるんだけど、どうしても1人は怖い...」
「そりゃ誰だってこんな状況じゃ1人は心細いよ」
そういえば私たちより先に出た子や後に出た子達はどうしたのだろうか。
後に出たみなみや未央奈は仲がいいからそこは2人で行動しているとして、最初に出た真夏と仲がいいのは最後に出た若月だ。
若月は玲香と行動しようとした可能性もあるが...どっちにしても落ち合う場所を決める手段もなかった以上、1人で行動している気もする。そうやって考えていくと
「3人以上で行動している組が私達以外にある可能性は低そうだから、とりあえず動いてみる?数の上では有利だし、いきなり仕掛けてくることはないんじゃないかな」
「確かに...食糧も確保しておくに越したことはないし」
一実が賛同する。動くしかない日芽香も頷く。
「拳銃は...とりあえず威嚇用にもっておくってことで」
むしろ恐怖感を与えて刺激してしまう可能性もあるが、丸腰であると思われて襲われる方が怖い。
「奇襲には気をつけなきゃね、武器によっては一気に全滅する可能性もあるし...」
「武器によってはって...?」
日芽香が青ざめる。
「あるのかは分からないけど、マシンガンとか手榴弾とか...」
「もう無理...絶対無理だって」
日芽香が泣きそうな顔になる。
「動くのは危険だけど、どんな武器があるのか確かめて手元に置いておくだけでも有利になる。動かないでいてもどんどん食糧も減ってジリ貧になるだけ。だから勇気を出して動こう」
一実が言う。
「...うん、頑張る」
日芽香が声を絞り出す。
「よし、行こう」
そう言って立ち上がる。それぞれが自分のリュックを背負う。ここにいる3人ともがリュックで来ていたのは幸いだった。手が塞がることがないので動きやすい。
「とりあえず校舎にもどろうか、特別教室棟の方にいってみよう」
私達の学校の校舎は教室棟と特別教室棟が平行に並んでいて、各階二箇所で繋がっている。特別教室棟にあるのは理科室や家庭科室、職員室などだ。
今いる剣道場へは私達の教室から特別教室棟を通って来たので、ここからだと特別教室棟の方が近い。
3人で剣道場を出て校舎に入る。 
「曲がり角には気をつけないとね...」
そう言って教室前の廊下を覗き込む。すると絵梨花が拳銃を片手に立っていた。向こうもこちらに気付く。
「っ!」
反射的にこちらに拳銃を向けてくる。パァン!と弾ける音がしてこちらとは少し離れた方に銃弾が飛んで行く。
「一旦逃げよう!」
後ろから覗き込んでいた一実がすかさず言う。私と一実が近くにあった階段を駆け上り、状況の把握が出来ていない日芽香が一歩出遅れてついてくる。後ろを振り向くと絵梨花が追いついてきて日芽香に銃口を向けていた。私は一発、威嚇のつもりで絵梨花の方に撃つ。
「いつっ!!」
どうやら絵梨花の肩を掠めてしまったようだ。絵梨花はその場でうずくまる。私達は2階へ登り、近くにあった教室に転がり込むようにして隠れる。
「はぁ、はぁ...絵梨花はもう完全にやる気みたいだね...」
肩で息を切らせながら一実がいう。
「はぁ、うん...最初に銃を向けてきただけなら、威嚇の可能性もあったけど...追いかけて来たときには完全に日芽香の背中を狙ってた」
日芽香が青ざめる。こちらが3人いるのを見ても躊躇なく撃ってきたところをみると、他人のことが全く信用できなくなるほど厳しい条件を引いたのかもしれない。
「それに、私も絵梨花を撃っちゃったからもう絵梨花とは完全に敵対しちゃったね...」
「あれは仕方なかったと思う。とりあえずしばらくここで息を潜めよう。絵梨花が追いかけてくるかもしれないし、無闇やたらに逃げると他の人からも不意打ちされるかもしれない」
そう言って一実が部屋の隅にある木箱を指差す。
「運良くまたアイテムが手に入るみたいだしね」
「ホントだ...」
また食糧が確保できるかもしれないという期待と、恐ろしい武器が入っていたらどうしようという恐怖が混じる。
「開けるよ...」
一実が蓋を持ち上げる。中に入っていたのは...
「何?これ」
パッと目に入ったのは黒い塊だった。持ち上げてみるとベストのような形をしている。
「防弾チョッキってやつかな」
「これは嬉しいね、でも二つしかない...」
「いいよ、二人が着て。私は運動神経には自信があるから」
一実が言う。
「でも...」
「いいっていいって。これ、多分服の下に着るやつだから後ろで着替えてて。私はドアを見張っておくから」
そういって一実はこちらに背を向ける。
「分かった、ありがとう...」
そういって私と日芽香は着替え始める...

今なら二人は丸腰...まず七瀬を撃って、それから狼狽える日芽香を撃てば一気に片付けられる...そんなことを考えてしまう。
(もし七瀬が私以外に殺されたら?絵梨花もゲームに乗っていたし、他の子ももうやる気になっている可能性は高い。そうしたら七瀬は無駄死に...ならせめて私の手で)
そんな打算的な考えに頭が支配されて行く。でもいざ動き出すことはできない。
「一実?ありがとう。着替え終わったよ」
(ふぅー...)
七瀬を殺すチャンスをまた一つ失ったことにほっとする。
(でも、誰かに殺される前に殺さないと)